【9/12(土)公開】先行特別上映キム・ボラ監督オンライントークの全容をご紹介!

★8/21(金)先行特別上映にて行われたキム・ボラ監督オンライントークの全容をご紹介!

『はちどり』キム・ボラ監督オンライントーク

2020年8月21日(金) 札幌・シアターキノ

 

シアターキノ 代表・中島洋:きょうはオンライン会議ツールを利用し、映画館の上映システムを通してトークを行いますが、技術的な問題で開始が遅れて申し訳ありません。『はちどり』のキム・ボラ監督にお話を伺います。まず会場の皆さんに一言いただけますでしょうか。

 

キム・ボラ監督:こんばんは、キム・ボラです。皆さんにお会いできて嬉しく思います。今の(新型コロナ下の)状況で映画館に行くということがどういうことか、よく知っているだけに、本当にありがたい気持ちです。

 

進行(北海道大学教授・玄武岩):聖水大橋の崩壊や家の撤去に抗議する人は、韓国の開発・発展のひずみといえます。ヨンジ先生が社会問題に関心が強いことが暗示されていますが、強いメッセージとしては描かれていません。このような事件はウニ、または監督自身の生き方にどのような影響を与えたのでしょうか。

 

監督:私もウニと同じく、1994年は中学生でした。聖水大橋の崩落という事件は中学生の自分にとって大きなショックでした。事件に関係する人だけでなく、韓国社会全体にとって大きな事件だったのです。日本でも近い時期にオウム真理教のサリン事件や阪神大震災が起こりましたが、このような重大なことは人の心に多大な影響を残します。

崩落した聖水大橋が重要な場面に登場します。この場面は、橋の崩落と、友達や家族との関係が壊れたウニの内面を結びつけて描きました。この映画はウニが成長する映画であるとともに、韓国社会が成長する映画だと思っています。

ところで、映画を見た人の多くが、女子中学生の描き方が良かったと言ってくださいました。日本もそうだと思いますが、女子中学生は可愛くて、けらけら笑っているキャラクターとして描かれることが多いのです。ネット上でも性的イメージで見られていることがわかります。純心で何も知らない、男性の性的ファンタジーの対象です。しかし自分が中学生時代を振り返っても、それは違います。女子中学生も孤独を感じたり内省したり、ボーイフレンドとの関係も単に男女の関係ではなく人間的な葛藤を伴ったりしています。そういうリアルな女子中学生の姿を描いて共感を得ることができたと思います。

 

進行:「手」が描かれるシーンが印象的です。ヨンジ先生の言葉を思い出して指を自らの意志で動かすことは、家父長制の中で抑圧された自分を解放し、不当な扱いに抵抗しようとする主人公の思いの表れのように思えます。監督が「手」にこめた思いは何でしょうか。

 

監督:ウニの家と同じように私の両親も店をしていて、私も学校から帰るとよく手伝っていました。その時に手が赤くなったりしたことを思い出し、そのシーンを入れました。

ヨンジ先生の歌は「指」を歌っていますが、これは主に学生運動に関わる人が歌っていた労働歌です。子どものために歌うものとしては違和感があるかもしれませんが、むしろこうした歌がヨンジ先生なりの子どもたちへの応援だと考え、これに決めました。

ところで、初めは何の関連もないと思っていた出来事が、あとからつながることがあります。撮影が終わって編集に入ったとき、映画全体に手の表現がたくさん出てくることに気付きました。これは最初から意識したわけではありません。創作者も知らなかったことが、後になって分かることがあるのですね。

偶然といえば、別の話になりますが、ウニが病院に行く前にヨンジ先生と会う場面で木が出てきます。あるときポン・ジュノ監督と対談する機会があり、そのシーンの風はどうやって吹かせたのかと聞かれたので、冗談で「強風機です」と答えました。実際は風が吹いたのです。するとポン監督は「あの風の吹き方は、あのシーンにぴったりだ。映画にはそんな奇跡の瞬間がある」と言ってくださいました。

 

進行:シアターキノ側が「今年の海外作品ベスト1」と絶賛する繊細で素晴らしい作品です。ウニに寄り添って撮っていくために、演出や撮影で大切にされたことはどんな点でしょうか。

 

監督:まず1つめです。映画を作るときは一つのことだけに気を使うのではなく全体に目を配ります。どんな人がきれいに見えるかということを考えても、目だけがきれいということではなく、全体を見ますよね。映画も演出、シナリオ、演技、撮影技法、ロケ地、美術など各方面に気を使います。

シナリオに関して言うと、この作品のシナリオは2013年、近くのカフェで2カ月かかって書き上げたのですが、最後のシーンを書き終わったときに涙が出ました。自分に真摯に向き合って書いたという実感です。映画には作家の心の状態が現れると考えています。以前、作り手の心の状態が良くないと思われる映画を見て辛かったことがありました。ですからこの映画には、愛の心をもって臨みました。

2つめは子役の演出です。子役との信頼関係を作ることがもっとも大事だと思い、撮影の6カ月前からウニ役のパク・ジフと何度も会って、話をしたり質問したりご飯を食べたりして互いを知ることに努めました。子どもは大人の顔や言動を見て、自分がどう見られているか、自分のことを信じているかを察します。互いに好きになり信頼関係をつくることが重要なのです。

撮影のとき、子役から出た質問の答えを監督が知っていても、教えてはいけません。「こんな時はお母さんから何を言ってもらいたい?」などと問いかけ、子役の口から自然に言葉が出るようにすることが重要です。本作では、何テイクか撮ったあと、最後のテイクでは自由に思った通りに演じてもらいました。そうすることで子役も一緒に映画を作っている実感が持てたと思います。

3つめはカットです。ハリウッド映画は1秒にも満たない短いカットをつなげて、早い呼吸に観客を乗せていくものが多いです。逆に、私の映画ではできるだけカットを長くとり、ゆっくりとした呼吸を心がけました。ウニが家の中で踊るシーンは2分以上あります。観客が歩いてついてこれる呼吸です。

監督が観客に「こう感じろ」と押し付けるのではなく、観客が映画を見ながら自分の経験を共有し、映画を見ることで自分のストーリーを完成させることができるようにと考えています。

 

進行:韓国のインディペンデント映画界に女性が増え、昨年の釜山映画祭の韓国コンペ部門はノミネート作の監督の半数以上が女性でした。多くの作品が個人的な物語を描いていながら、観客に強く共感されています。韓国映画界で女性の作品が注目される背景として、何があるとお考えですか。

 

監督:この質問は他の方のほうが適切に答えられると思いますが、やはり家父長制や男性中心主義の世の中が変わってきたということの表れではないでしょうか。

女性の観客からの質問:医院の院長に診断書を書いてあげると言われるシーンで、ウニはうなずいたりせずに黙っています。これは、自分が取るに足らない中学生だから兄を訴えても無駄だと思っていたのでしょうか。その部分が気になりました。

 

監督:良い質問をしていただいてありがとうございます。このシーンでは、ウニを支持する大人が存在するということを示そうと思いました。家庭や学校でないがしろにされている子を気にしてくれ、介入してくれる大人の姿を見せたかったのです。ヨンジ先生も、最初はそうではありませんでしたが、ある時から積極的にウニに介入します。病院に入院したときに同室だったおばさんたちも子どもを気にかけて保護する大人です。大人がみんなダメということではなく、希望を見せたかったのです。ウニは診断書をもらったとしても兄を訴えたりはしないでしょうが、院長の申し出はウニにとって慰めとなったはずです。

 

進行:もっとお話を伺いたいのですが、残念ながら時間になりました。監督、最後に一言いただけますか。

 

監督:きょうはこんなに遅い時間まで参加してくださり、ありがとうございました。みなさんの熱気がオンラインでも伝わってきました。質問してくださった方、企画してくれたスタッフの皆さんにも感謝を申し上げます。また良い作品でお目にかかりたいと思います。