TOP >> WEBコンテンツ >> 洋のつぶやきブログ >> 2016年3月8日

シアターキノ関連アカデミー受賞スピーチ

アカデミー賞の授賞式を録画していたのを、やっと見ることができた。何せ4時間以上あるので時間がなかなか取れなかった。今年のアカデミー賞は、スパイク・リー監督たちが黒人が一人もノミネートされていないことに抗議してボイコットを呼びかけて大きな問題になっていたが、受賞作にリベラルな作品が多く、またショーでもマイノリティに寄り添ったものがあって、共感をえるものが多い授賞式だった。
 主なものを拾うと
●レッドカーペットの時にすでに、「スポットライト」で助演男優にノミネートされていたマーク・ラファロが「性的虐待の被害者の集会に参加して、声をあげている。映画がその手助けになれば。黒人の問題をハリウッドでも議論すべき」といい、司会のクリスロックは早速「司会がノミネートだったら私は選ばれなかった」と皮肉のジョークで場内をおお笑させ、「私たちがなにを抗議しているのか、黒人差別は50年代、60年代にもあったでしょ。その時には抗議擦るよりもっと重要な対象があった。レイプされたり、リンチされたりしている時に、撮影賞が誰、自分のおばちゃんが木からぶら下げられている時に、短編がどうだなんていう暇がなかった。やっと映画界、ハリウッドにも差別があることを言うようになって、今がある。今年のオスカーは違いますよ、追悼の中では、映画を見に行くという途中で殺された黒人だけが登場します」と痛烈な皮肉をいい、「ああ言ってしまいましたね」と。「私が思うに、黒人のカテゴリーを作ったらいい。もともと演技で男と女で分ける必要はない。陸上競技じゃないのですから。本当に問題なのは、世界中の人が関心があるのは、ハリウッドの人種差別。ソフトなんですよ。「君のことは気に入っているよ。だけどこの枠には入れないよ」という感じなんですね。でも変化は起きている。黒人は平等な機会を求めているだけなんですよ。レオはいつもいい役をもらえるじゃないですか、でもジェイミーフォックスはどうでしょう。」と、きつめのジョークを大連発で、場内おお笑い。でも観ていて思ったのですね。笑いや皮肉だから伝わるようにも思ったのですね。笑いってとっても大切だと今更ながら(笑)。
・脚本賞「スポットライト」脚本のトム・マッカシー監督とジョシュ・シンガー「オープンロードに感謝します。ジャーナリストの皆さんのために、この映画を作りました。被害者の皆さんに勇気をもらいました。二度とこういうことが起こってはならない」
※ちなみにオープンロードは、ハリウッドではなく、日本で言うところの小さな独立プロダクションだからこそ作りえた作品だということがいえる。
・短編アニメーション賞「Bear Story」の監督たち
「チリのみなさんがサポートしてくれ、作ることができました。祖父に感謝しています。ストーリーのインスピレーションをくれました。逃亡先で助けていただいた皆さんに感謝しています。二度とこういうことがあってはならない。チリ初のアカデミー賞、私達にとっては、とっても大切な賞です。」
町山さんの解説によれば、チリのピノチェト軍事政権で政治犯を虐殺したりしたことが、この作品の背景にあるとのこと。
・アカデミー会長
「映画を見る人はグローバルで多様です。作る人たちも多様にならなくてはならない・ハリウッドの一人一人が役割を担っています。一人一人が大使となり、このことを伝えなければならない。同意するだけでなく、行動することが必要です。」
・外国語映画賞「サウルの息子」のメネシェ・ラースロー監督
「大変な名誉です。サポートしていただいた皆さんありがとう。ハンガリーにも感謝します。共有したいのは、主人公の想いです。暗い状況に直面した時でも、我々の中に声がある。それが我々の人間性を保持してくれるのです」
・歌曲賞の紹介で、バイデン副大統領がサプライズで登場し、場内総立ち、これがアメリカなんでしょうね。日本だと逆に帰れコールになったりして。
「資格のない私が紹介を引き受けたのは、ここ数年、少しは改善されたが、今でも多くの女性・男性が性的虐待を受けており、私たちはオバマ大統領と共に、虐待を防止する法案を通そうとしていますが、共和党の反対にあっています。この法案を通すために、署名をしてください。
 文化を変えましょう。こういうあしき文化の悪習を変えましょう。暴力の被害がなくなるように、自分を責めることがないよう、自分は何も悪いことをしていないのです。是非署名をしてください。友人のレディー・ガガを紹介します!」
・そして、レディ・ガガの歌は素晴らしいものだった。見事なパフォーマンスだった。虐待を生き抜いた被害者の人々が、自ら出演し、自らもレイプにあったことを公表しているレディ・ガガがこのドキュメンタリーのために作曲し、その被害者の「あなたのせいではない!」と歌った。涙ぐんでいる人も続出し、場内総立ちになった。ああ、エンターティメントの力、映画や音楽の力がここにあるのだと強く強く感じた。
・主題歌賞にノミネートされた「グランド・フィナーレ」のスミ・ジョー(カラヤンから「神からの贈りもの」と称えられた)のオペラの歌曲の素晴らしさには圧倒され、受賞すると思っていたのだが、エンニョーモリコーネに贈られた。でも、この時の大先輩に対する心よりの敬意の表明としての総立ちを、私も贈りたいと思った。映画の先人たちを本当に心から大切にすることを私たちもしっかりと学びたいと思う。
・二年連続の監督賞のイナリィトウ監督の先住民族への敬意を表したスピーチも素晴らしかった。
・そして作品賞の「スポットライト」だ。
「被害者の声を広げてくれるのが、アカデミーです。バチカンにまで届くことを期待しています。子どもたちを守っていく信仰を取り戻す時です」
「私がここに立てるのは、多くの被害者の人たちの声があったからこそです。ジャーナリズムの必要性を伝えてくれたことです」
本当に、この作品は有名なジャーナリストではなく、無名のチームによって多くの被害者を救うことになった大スクープを形にしていったことが、何より素敵だと思います。初めに述べたように、オープンロードといいう新しくできた小さなプロダクションによって製作されたことの意義は本当に大きく、このジャーナリストチームのようでもあるのです。
シアターキノでの公開は
「サウルの息子」3/12(土)~
「スポットライト」4/15(金)~
「グランド・フィナーレ」4/16(土)~

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