TOP >> WEBコンテンツ >> 洋のつぶやきブログ >> 2016年1月15日

シアターキノのベスト10と、私のベスト10

1/11(月)夜、キノの新年会でキノベストテンの最終投票があり、2015年ベストテンが決まった。
このベストテン選考は、例年通りお客様の投票(1位~5位)の合計投票数で上位20位までを選び、その作品に対しキノスタッフとボランティアスタッフが最終投票(1位~5位)をして選んでいる。投票していただいたお客様は、71名、新年会に参加したキノメンバーは21名でした。
<日本映画>
1 百円の恋
2 海街diary
3 野火
4 きみはいい子
5 FOUJITA
6 バクマン
7 あん
8 白河夜船
9 首相官邸の前で
10 戦場ぬ止み
次 ダライラマ14世
  この国の空
<外国映画>
1 Mommy
2 おみおくりの作法
3 黄金のアデ―レ 名画の帰還
4 パレードへようこそ
5 マッドマックス 怒りのデス・ロード
6 バードマン
7 セッション
8 イミテーション・ゲーム
9 ザ・ヴァンパイア
10 エール!
次 靴職人と魔法のミシン
キノらしい結果になったように思う。キノスタッフの投票によって、順位がかなりあがったのが、「白河夜船」「首相官邸の前で」「Mommy」「パレードへようこそ」「ザ・ヴァンパイヤ」などで、平均年齢20代~30代が選ぶ感性が引き揚げたように思う。このような感性をぜひ持ち続けてほしいと思うし、65歳の私もまたこういった作品に、しっかりと反応できる感性を持ち続けていきたいと思っている。今のところこういった作品に十分反応できているので、まだ大丈夫かと(笑)
発表後に恒例の一人一人が、今年のベスト1本を語っていくのだが、それがまたほとんど違うのがいいのですね。みんな違って当たり前、それぞれの作品を大切にしてください。

続いて私のベストテンです。
<日本映画>
1 海街diary
2 首相官邸の前で
3 百円の恋
4 FOJITA
5 幕が上がる
6 野火
7 戦場ぬ止み
8 この国の空
9 さよなら歌舞伎町
10 花とアリス殺人事件
次 私たちのハァハァ
<外国映画>
1 Mommy
2 バードマン
3 セバスチャン・サルガド 地球へのラブレター
4 私の少女
5 パレードへようこそ
6 マルガリータで乾杯を
7 サイの季節
8 あの日のように抱きしめて
9 黒衣の刺客
10 妻への家路
次 みんなのアムステルダム国立美術館へ 
★「海街diary」は、是枝監督のほとんどの作品に通底している「残された者がどう生きるのか」というポジティブな死生観の集大成と言えるような傑作であり、愛おしさに溢れている。映画を描くときに「何を描くか」と「どう描くか」の両方が大切だが、えてしてどちらかに偏る作品が多い中で、フィルムで撮影された是枝監督のそのバランスは見事といいう他ない。
 「首相官邸の前で」は、ほとんどがスマホなどで撮影された映像を編集したものだが、歴史学者、社会学者でありミュージシャンでもある小熊監督の深い知識とサンプリングのセンス、そのクオリティには驚かされた。これから数多く表現されていく、新しい映画の筆頭であり、21世紀のニューシネマと言える。それは次点の「私たちのハァハァ」にも通じることだが、スマホやデジカメで撮ったから新しいのでなく、そういった映像をサンプリングしつつ、作家的な強度があることが頼もしいのだ。もちろん、外国映画ベスト1の「Mommy」がその頂点にあることは疑う余地もない。
 「日本で一番長い日」は私には良さが見つけれない作品であった。一言で言うと、戦争を起こした男たちの物語がこの作品で、その戦争にほんろうされた女たちの物語が「この国の空」だった。どちらを支持するかは明らかだろう。
 ごく少数のアニメファンにしか相手にされず、不幸な興行に終わってしまった「花とアリス殺人事件」は、まぎれもなく岩井俊二ワールドの優れた作品で、評価以前にほっておかれたのは本当に残念だった。是非DVDでもいいので見てほしい。あと、「みんなの学校」等ドキュメンタリーも素敵な作品が増えていて、キノだけではとても上映しきれないので、積極的に自主上映をしてほしいと願っている。
 
★外国映画では、ヴェンダース監督が、2011に福島を訪れ、その思索の果てに撮ったのが「セバスチャン・サルドガ 地球へのラブレター」だ。キノであらためて3/12~6日間だけだが上映するので、その時にあらためてご紹介します。
 4~6位は、意図したわけではないが同性愛が絡んだ作品が続いたが、映画や表現の世界で、このようなセクシャリティはもはや当たり前のことであり(現実でも当たり前だが)、それを題材にするからすごいといった時代はすでに終わっていて、そのクオリティこそ問われるようになっており、私はこの3作品それぞれのスタイルの違いに、次の未来を感じることができる。7~10位の重厚な作品たちは、巨匠たちの健在ぶりも示して大変嬉しいことだった。次点は民主主義はすぐに決定打が出ないが、しかし長い時間をかけての市民の対話があることによって、より良いものができる民主主義の素敵さを示してくれた。一人のヒーローによって社会が変わるようなことは21世紀には起こらない。

洋のつぶやきプログバックナンバー