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全国映画よもやま話

札幌在住の映像作家 馬場ふさこさん  “全天周の美”に特別賞

2015年7月3日(金) 北海道新聞 夕刊

独・イエナの芸術祭 フルドーム・フェス

札幌在住の映像作家・馬場ふさこさん(61)が、5月末にドイツ中部のイエナで開かれた国際的な全天周映像芸術の祭典「イエナ・フルドーム・フェスティバル」で、15分以内の映像作品から選ばれる特別賞「Blaue Blume Award(青い花賞)」を受賞した。(古家昌伸)

 

残像花 「変化し続ける」コンセプトに

フルドームとは、プラネタリウムのように球を半分に割った形の施設で、ドームシアターとも呼ばれる。その内側(全天周)をスクリーンとして投射して見せる作品がフルドーム映像だ。

イエナのフェスティバルは、世界最古のプラネタリウムドームが会場。世界各国からフルドーム映像を募集して会期中に上映、審査を行う。賞は学生と一般対象を合わせて九つあり、「青い花賞」は、15分以内の作品を集めたショートプログラムから選ばれた。

受賞作は「秘密の小径(こみち)」を意味する「Obscure Path」というシリーズの一環で「The Flower of Afterimage(残像花)」と題した。青い花が空間に浮かび、呼吸するように花弁を広げ、映ったり消えたりする。地上からは水晶が立ち上がっては消えていく。「一つの場所にとどまるためには、変化し続けなければならない」ことをコンセプトに制作した。

馬場さんは会期中に主催者から「あなたの作品を最終日のガラ(表彰式を兼ねたパーティー)で上映する」と告げられたが、当日まで受賞したとは思わず、壇上でトロフィーを受け取って驚いたと話す。長女と長男が現在ベルリン在住で、フェスティバルは「久しぶりに子供たちに会いに行くのを兼ねて」の参加だった。受賞は意外だったし、滞在中に熱を出して寝込んだため「ぼーっとしているうちに時間が過ぎた」と振り返る。

歌志内市生まれ。札幌の短大を卒業後、会社勤めを経てイラストレーターとして活動。十数年前からパソコンで万華鏡などをモチーフにアニメーションを制作し、インターネット上で見られる作品やテレビ番組向けの映像などを手掛けた。

2006年に、東京・池袋のカメラ会社のプラネタリウムで見せるフルドーム映像の制作を依頼されたのが転機となる。以来、札幌市青少年科学館などプラネタリウムがある施設や企業の注文に応えるほか、「サッポロ・シティ・ジャズ」が札幌・大通公園に仮設されたドーム形テント「ホワイトロック」で行われていたころ、コンサートの演出としての映像を手掛けた。

コンテスト参加は今回が2度目。「注文を受けてではなく、一から作品を手掛けてみたい」と考えてのことという。東京・洗足学園音大や早稲田大などで教える現代音楽の作曲家、宮木朝子さんと共同で、今回の受賞作に取り組んだ。

フルドーム映像は、見ている人の周囲360度を映像が取り囲むことで「どこか違う空間に行ったような気分になれる」のが魅力という。今後は「実写も交えた映像に挑戦してみたい」と話し、「身近に作品を発表できるドームシアターがあるとうれしい」と思い描いている。