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全国映画よもやま話

17年の札幌国際芸術祭芸術監督 大友良英さんに聞く

2015年12月9日(水) 北海道新聞 夕刊

 

■17年の札幌国際芸術祭芸術監督 大友良英さんに聞く

 

街にフォーカス 祭り演出

 

2017年夏の札幌国際芸術祭(SIAF/サイアフ)は、芸術監督(ゲストディレクター)に音楽家大友良英さん(56)の就任が決まり、テーマや参加アーティスト、プロジェクトなど開催に向けた本格的な準備に入った。大友さんは11月20日、就任決定後初めて札幌を訪れ、記者会見でSIAFの方向性などについて現在の考えを語った。大友さんの芸術祭への思いを紹介する。

(久才秀樹)

 

―芸術監督に選ばれた際の気持ちは。

「前回の芸術監督は坂本龍一さん。同じ音楽家だから、僕に話が来たことは予想外だった。札幌から『他とは違う芸術祭をやってほしい』というメッセージだと強く受け止めた。一般の人、地元の人とどう関わるかが僕の使命。地元の人たちと一緒に、どう芸術祭をつくっていくかに尽きると思います」

―秋元克広札幌市長も市民参加型をうたっている。具体的な仕掛けは。

「概要の発表は来年2月なので現時点で具体的には言えない。ただ、プロにはプロの役目があるが、一般の人でしかできないものも絶対にある。プロ(の芸術家)にはできないものを作りたい。もちろん作品のクオリティーは落とさないそういった芸術祭は世界的にもあまりないのではないか」

― 昨年の芸術祭では札幌・北3条広場で「盆踊り」や巨大な風呂敷を広げる企画を手掛けた。

「盆踊りは(昨年は)芸術祭のイベントだったが、今年は自主的に市民のチームができて開催した。来年もやる気満々という。芸術祭をきっかけに、地元の人が動き続けられるものをつくりたい。子どもたちと大きなプロジェクトができたらいいなとも思っている」

―前回は「都市と自然」というテーマがあった。

「都市と自然という考えは次回も底流にはあるだろうが、その大きなテーマを暮らしの中で、具体的にどう形にしていくかが、自分の役割だと感じている。祝祭感をどう出すかも大きな課題。芸術って何だ、祭りって何だ―を問うことが一つのテーマかな」

―美術との接点、とくに地元の美術館との関わりは。

「難しい課題です。ただ、日本の場合、芸術祭というと現代美術祭になっている。美術は芸術の中で重要な一つだが全部ではない。今回も美術とも音楽とも言えない領域を入れると思う。普通の芸術祭では、これはないよね―というものが入るかもしれません。芸術祭からスピンオフして、例えば夜のススキノで面白いことが起きるくらいなものができるといいなあ」

―独自色をどう出していくか。

「札幌は大都市。街にフォーカスを当てたい。街は人でもある。札幌には毎年、コンサートに来ていて、友だちも多い。仲良しグループにはしたくないが、札幌の人たちと組んで何をやるのか。特に祭りの部分をどう演出するかが特色になればいいと思う。国内の芸術祭はヨーロッパの影響が大きいけど、日本の祭りに影響を受けた芸術を取り入れたい。だからといって、ずっと盆踊りをやり続けるわけではないけどね」